上位蜃気楼化した対岸の安土方面を眺める -工場の煙突の煙が蜃気楼発生のメカニズムを示唆?-


風の風景 No.478

2007年5月12日(月)、午後2時半過ぎに小松浜を訪れると、対岸では多彩な上位蜃気楼が出現。詳細は北湖の蜃気楼情報を参照して欲しいが、ここでは発生のメカニズムについて考察する。
 画面左手に工場の煙突が2本見えるが、左からは煙が出ている。煙の流れは湖岸に垂直な南東方向で、これは明らかに湖風によると考えられる。琵琶湖北湖の上位蜃気楼の発生時は、筆者の観測から湖風の場になっている時が殆どである。
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◎琵琶湖の上位蜃気楼発生の考え方
★南湖(なぎさ公園から観測) 烏丸半島方面では北東風
<伴先生の考え方>
 これは野洲・守山方面の湖岸付近からの暖気を運んでくるとする「暖気移流説」で説明できるとしている。
 また、伴先生の「北湖の湖風による暖気が南湖に侵入する」という新説もあるが、受け入れは容易ではないようだ。

★北湖での上位蜃気楼観測の代表例(北湖の蜃気楼情報:松井の観測による参照)
①2001年5月13日(日)15時過ぎ ・・・・琵琶湖は湖風。志賀町は比良山系に沿う北東の風。
②2003年2月10日(月)13時過ぎ ・・・・今津町南浜から見る対岸の蜃気楼。湖北は湖風。
③2003年5月 5日(月) 16時過ぎ ・・・・小松浜から琵琶湖大橋の1日の変化を追う。湖風。
④2004年4月10日(土)14時過ぎ ・・・・彦根市石寺町から彦根プリンス方面を見る。完全な湖風。
⑤2007年4月29日(日) 午後3時半過ぎ ・・小松浜ではスケールの大きい上位蜃気楼を観測。
                      ・・南湖での発生なし。浜大津では南西風。北湖では湖風。
<松井の発生メカニズムの考察>
北湖の上位蜃気楼発生は、いずれも穏やかな湖風の場になっているときに起きている。このような湖風の場では暖気移流説は考えにくい。 琵琶湖は周りを山で囲まれ、盆地の中央に位置する。湖風は放射状に琵琶湖から陸地へと吹くので、移流説のようにどこからどこへ という一方向への風の流れは考えにくい。
湖風の場に於いて、ではどうして上位蜃気楼に必要な暖気層が形成されるのか。これは難しい問題である。湖風が陸地と湖上を循環し、表面では湖から陸地へ向かい、陸地で上昇し、上空では逆に陸から湖へと流れ、湖では上から湖面へと流れる対流をもたらしていると考えられる。これが定常的な流れを形成し、湖上に暖気層を形成すると考えるのが妥当ではないか。このメカニズムはこれから詳細に検討する必要があるが、上位蜃気楼発生時の気象条件を考えると、湖風の存在が要因になっているのは明らかである。
「湖風が暖気を形成する」というメカニズムは、十分な熱の発生・蓄積から考えると難しいかも知れない(湖面での下降気流による断熱圧縮による温度上昇効果は小さいと専門家の間では考えられている)が、湖風が必要条件的な役割を果たしている可能性は高い。湖風が要因になっているという視点から、今後も観察・観測を行い、解明に必要なデータ収集を行いたい。

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