蜃 気 楼 を 撮 影 す る に は (Updated 2001/05/06)

一眼レフカメラでの撮影||ビデオカメラの動画&静止画撮影||デジタルカメラでの撮影

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 テレビや新聞等で蜃気楼をご覧になられた方や実際の蜃気楼をご覧になられた方の中には、自
分で撮影してみたいと思われることもあるかと思います。しかし、今まで述べてきましたように、上
位蜃気楼や下位蜃気楼は、小さなものです。使い捨てカメラやコンパクトカメラでは何が写ってい
るのか分かりません。本格的な一眼レフカメラや高倍率撮影が容易にできるビデオカメラが必要
になってきます。そこで、蜃気楼の撮影に適した3タイプのカメラでの撮影時のアドバイスについて
述べたいと思います。
 一眼レフカメラは、従来のイメージ(重い・難しそう・値段が高いなど)と異なり、最近は「高性能・コ
ンパクト・軽量・安価」なモデルが登場したことで、一眼レフ所有率も高くなったように感じます。
 次に述べますデジタルスチルカメラがいくら性能が良くなったといっても、まだまだアナログの「銀
塩写真(フィルム式)」に追いつけない部分が多々あります。
 通称「デジカメ」なるデジタルスチルカメラは、ここ数年で飛躍的に画素数が向上したことによりレン
ズ性能も向上しました。価格も各画素数に見合った値段(中には一眼レフのレンズ付よりも高額!)
ですがパソコンとの親和性の良さから、銀塩カメラよりもよく売れているようです。
 ビデオカメラは、一眼レフカメラの超望遠領域(35ミリスチル換算で、500ミリ相当)まで本体で撮影
できますし、動画というスチル写真では表現できない世界を記録できる強みがあります。近年、ビデ
オカメラにもデジタル化され「DVカメラ」とよばれ、従来のアナログ式のHi8やS-VHSCビデオカメラよ
りも高画質になりましたし、デジカメ的な静止画記録が100万画素を超えるモデルも登場してきまし
た。また、最近のパソコンで劣化の少ない編集(ノンリニア編集)ができるメリットもあります。価格も
従来のアナログ式ビデオカメラと同等かそれ以下と購入しやすくなってきています。
(2019年現在、デジタルスチルカメラで銀塩写真の画質を超えたものが多数販売されています。)



■ 一眼レフカメラで撮影する場合
Camera01.jpg (15464 バイト)

一眼レフカメラに望遠レンズを装着したもの



 

(1) 望遠レンズ
   双眼鏡なら10倍程度の倍率といいましたが、カメラの望遠レンズの場合は焦点距離500ミリ
  が10倍に相当します。上の写真は、焦点距離500ミリ望遠レンズを装着したものです。最低、
  焦点距離500ミリの望遠レンズが必要でしょう。日中に撮影するので、F値が暗くてもかまいま
  せん。レンズメーカ製のもので、F8前後のこのクラスで7万円前後(色収差を抑えたレンズを
  使用)です。それでも、まだ高倍率が必要な場合は「テレコンバーター」を使います。例えば、
  2倍のテレコンバータを使用すると1000ミリ(20倍相当)になります。この通称テレコンバー
  ジョンレンズは、安いもので、1万4千円前後で入手できます。私の場合は、焦点距離500ミリ
  の望遠レンズに2倍のテレコンバーターを装着して撮影しています。望遠レンズはカメラメーカ
  ー製のレンズでなくてもちゃんと写ります!心配ご無用!!
  
 ※ テレコンバーター(テレコンバージョンレンズ、エクステンダーともいう)は、レンズの焦点距
   離を安価で延ばすことができる便利な装置です。現在では2倍、1.4倍のものが販売され
   ています。一方、デメリットとして倍率が1.4倍、2倍になれば、レンズ全体のF値が順に1.4
   倍、2倍暗くなります。(例えば、元レンズがF8ならば2倍のテレコンバータ使用でF16になり
   ます。ファインダーは暗くなり、ピントも合わせ辛くなります。)
※※ 望遠レンズは重いので、しっかりとした三脚を使い、シャッターはレリーズを使って下さい。
(2) カラーフィルムについて
   カラーフィルムで撮影した方が、安くつきますし、色修正などできて便利です。念の為にいい
  ますと、蜃気楼は双眼鏡で見たほどきれいに写りません。特に上位蜃気楼発生時やこの季節
  の湖上の視界はあまりよくありません。仕上がった写真を見てがっかりするかもしれません。
  腕のいい写真屋で、ある程度のコントラストやカラー調整が可能です。
   蜃気楼撮影にプロもアマも関係ありません。湖(海)上の視界がいい状態で蜃気楼が発生し
  た時を狙うしかありません。
この問題を解決する方法》
  「フジカラー」が開発した「レーザープリント」にすれば、蜃気楼特有の淡い色、コントラストの
 無さ、水蒸気などでかすんで見えにくい部分をコンピュータ処理によって、しまりのあるシャー
 プな写真にできます。
(3) フィルム感度について
   ISO100から400までが適当です。F値の問題でISO100を下回る場合、シャッタースピ
  ードが遅くなり三脚を使ってもミラーショックや振動によりボケた写真になります。ISO800
  を超えるフィルムは粒子が荒く引き伸ばしに絶えられません。
   最近のISO400は性能がよくなりISO100との差異はないといえます。ただし、リバーサ
  ルフィルムの場合はISO100が無難だと思います。
(4)  フィルターについて
   フィルターはUVカットタイプかスカイライトフィルター程度にしておいてください。
   偏光フィルターはあまりお勧めできません。カラーフィルムは最近、自動現像・プリントさ
  れるので色やコントラストがむちゃくちゃになります。その上、シャッタースピードが遅くなり
  ますのでピンぼけの要因になります。期待ほどの効果はあまりありません。
(5) リバーサルフィルムについて
   リバーサルフィルムで何度も撮影された経験の方は、お使い下さい。経験のない方は露
  出設定がシビアですから使わないほうが無難でしょう。また、リバーサルフィルムはカラー
  フィルムと異なり、あまり修正が効かないし、ダイレクトプリントは高価です。
   このリバーサルフィルムにもコンピュータ処理によるプリントがあります。
 コダック:コダックデジタル・ダイレクトプリント(最大4切りワイド迄)
 フジフィルム:レーザープリント(最大6切りワイド迄)
※ 上記のコンピュータ処理プリントはカラー(ネガ)フィルムほどの効果はありません。
(6) シャッタースピードについて
   カラー(ネガ)フィルムで撮影する場合は、オートで結構です。ただし、なるべく速いスピー
  ドで撮影して下さい。
  (画角が狭くなることと像がゆらいでいるためにピンボケ写真になりやすい!)
(7) ピント合わせ
   撮影物が遠方の蜃気楼なので以下の点に注意が必要です。

  ・ 望遠レンズの開放置がF8を超えると、カメラでオートフォーカスはできなくなります。
          ⇒ マニュアルでのピント合わせが必要です。
  ・ 望遠レンズの開放置がF8以下でも、遠方でコントラストのない対象物なのでオートフォ
   ーカスには辛い撮影状況下です。
          ⇒ マニュアルでのピント合わせが必要です。
  ・ 撮影対象が遠方だからといって、ファインダーでピント合わせをしないで、安易にレンズ
   側の「∞(無限遠)」マークにしないように。熱膨張や経年変化でズレが生じます。
          ⇒ ファインダーで確認しながらピントを合わせましょう。
  ・ 絞りを絞った方が被写界深度が深くなり、ピントの合う範囲も広がります。その弊害とし
   てシャッタースピードが低下します。蜃気楼を高倍率撮影すると大気の揺らぎが顕著にな
   るので、低速のシャッターでは像がボケる可能性もあります。
          ⇒ 絞るなら、シャッタースピードが100分の1秒を超えるように調整したほうが
            無難です。
  ・ 装填フィルムの感度の関係でシャッタースピードがカメラの限界を超える場合は、絞りで

   調整するのですがあまり絞ると「小絞りボケ」という現象で像がボケる可能性もあります。
          ⇒ ND(減光)フィルターを使いましょう。
  ・ ファインダーのみで正確なピント合わせに不安がある場合は、マグニファイヤー
   (上の写真参照:カメラの接眼部分)か像を拡大してピント合わせのできるアングル
   ファインダーを使いましょう。蜃気楼以外にも接写の際にも大いに活用できます。

 

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■ デジカメ(デジタルスチルカメラ)で撮影する場合
 デジカメのメリットは、撮影直後に画像を確認できる点、不必要な画像は直ぐ消去できる点、
パソコンを使ってコントラストや色の調整などを自分の思い通りに調整して、最近の高性能プリ
ンターで銀塩写真なみの印刷ができる点などがあります。
 デジカメには、プロユースを意識したレンズ交換できる一眼レフタイプもあります。この場合、
従来のカメラのレンズが利用できる、CCDのサイズが大きくできる、一般のデジカメと同等の
画素数でも解像度が高いというメリットがあります。一方、ボディーのみで30万円を越える、レ
ンズ交換時にホコリがCCDに進入可能性がある、バッテリーの消耗が早いというデメリットが
あります。また、レンズ交換できない一眼レフタイプのデジカメもあります。撮影倍率は、一般
のデジカメの撮影倍率より遥かに大きいのですが300ミリ(35ミリスチルカメラ換算)前後という
ところでしょう。値段も10万円を超えます。
 一般のデジカメでは120ミリ(35ミリスチルカメラ換算)前後がほとんどです。我々が購入する
であろうデジカメではこの部類だと思います。蜃気楼撮影に対してレンズの倍率が不足です。
しかし、蜃気楼撮影は不可能というわけでもありません。そこで、デジカメを購入検討中の方
や保有されている方への蜃気楼撮影をする時のアドバイスを書き連ねてみます。
(1) 画素数は200万画素以上のモデルで、マニュアル機能が充実したモデルを選ぶ。
  ⇒ 目安として、200万画素クラスでA4サイズ(ワイド六つ切り相当)、300万画素クラスで
     B4サイズ(ワイド四つ切相当)、400万画素クラスでA3サイズ(半切相当)まで印刷して
        写真として鑑賞できます。(画像データの解像度を200dpiとして)
     ⇒  マニュアル機能とは、絞りとシャッタースピードを独立して設定できたり、露出補正、ホ
        ワイトバランス調整などができる多機能なモデルの方が自由度が高い!
(2) 記録メディアは容量の大きいものを選ぶ。記録メディアには、CF(コンパクトフラッシュ)、
      SM(スマートメディア)、MS(メモリースティック)などがあります。
     ⇒ 目安として、32MBの容量で300万画素クラスのカメラの撮影枚数は最高画質モードで
         二十数枚程度です。(記録サイズ:2048×1536ピクセル、記録方式:JPEG低圧縮)
           同容量で200万画素クラスのカメラでの撮影枚数は最高画質モードで三十数枚程度で
         す。(記録サイズ:1600×1200ピクセル、記録方式:JPEG低圧縮)これらは、35ミリ銀塩
         カメラのフィルム一本分(24~36枚撮)に相当します。値段は32MBで4~5千円程度、
         64MB(この場合、32MBの2倍の画像記録が可能)で8千円前後とかなり割高感があり
         ますが、フィルムと違って何度も書き換え可能という利点があります。
          最近、各記録メディアともに安くなってきました。今後も記録メディアの低価格化は進
         むと思われます。
    
(3) 本体のレンズで撮影倍数(光学)はできるだけ高いモデル(スチルカメラ換算で焦点距離
      300ミリ前後の)を選び、フィルター装着用のネジがあるものを選ぶ。
     ⇒ 一般的にはで120ミリ前後の撮影倍率のモデルがほとんどですが、中には300ミリ(35ミ
           リスチルカメラ換算)前後のモデルが数社から発売されています。このモデルに2倍の
         テレコンバージョンレンズを装着すれば、蜃気楼を見事に撮影記録できます。
  
(4) 撮影時にはテレコンバージョンレンズを装着する。
     ⇒ (3)で述べました本体の最大倍率300ミリ前後(35ミリスチルカメラ換算)でも蜃気楼撮
         影には不足です。メーカー純正かフィルターメーカーなどから2倍前後のテレコンバージ
         ョンレンズ発売されています。値段は1~2万円程度です。その他、双眼鏡やフィールド
         スコープなどの接眼レンズに直付して撮影する方法もあります。この場合は、「ケラレ」
         が生じますから注意してください。
    
(5)  撮影時、対象物が明るいので注意が必要。
     ⇒ 背景が明るいので、ピントはマニュアルであわせる。
     ⇒ シャッター速度が限界を超える場合は、絞り調節よりも「ND(減光)フィルター」を使用し
         ましょう!
     ※ 絞りを銀塩カメラ感覚で絞る(たいていのデジカメの絞りはF8前後しかない?)とCCD
        の大きさの関係上、絞りは銀塩カメラの同絞り値より小さくなり、「回折現象」により、像
        がぼやけます。ですから、一般のデジカメでは絞り値がF8前後に留めているのだと思い
        ます。本体の最小絞り値F8や開放値でも撮影状況により、撮影画像に問題が生じる場
        合もあります。ですから、開放値より少し絞る程度からF5.6前後に留めて置くほうが無難
        でしよう。
  
(6) 画像記録は、使用デジカメの最高画質(ラージサイズ、JPEG低圧縮)で記録する。
     ⇒ この方式では撮影枚数が少なく、記録メディアも何枚も必要です。しかし、大きなサイ
        ズの最高画質のデータはパソコンに取り込んで、大きなサイズでの印刷もできますし、
        後でサイズを小さくもできます。もともと、小さなサイズや低画質では、大きなサイズで印
        刷すると、階段状に輪郭が描かれたり、ノイズの発生など見た目も鮮明といえません。
         「大(きな画像データ)は小を兼ねる(小さな画像データにもできる)。」ということです。
 
※※ デジカメの場合、気軽に撮影できますが、後々のことを考えて撮影サイズを決めること
       が必要ですし、パソコンで加工(サイズ、明るさとコントラスト、色調整など)するために、デ
       ジカメの特徴やパソコンの基本的な使い方、画像処理ソフトの使い方、プリンターの調整
       などそれなりの学習が必要です。

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■ ビデオカメラで撮影する場合

dv_cam1.jpg (20732 バイト)
 ビデオカメラにテレコンバージョンレンズを装着したもの
(このビデオカメラの撮影倍率:スチルカメラの倍率で5000ミリ相当)




 

 ビデオカメラは、Hi8でもSVHSCでもDVカメラでもかまいません。ビデオカメラ本体の望遠
撮影は、光学方式で400~800ミリ(35ミリスチルカメラ換算で)程度もあります。この程度あれ
ば、蜃気楼の様子もつかめます。写真は一瞬を切り取るのでよほど条件がよくない限り、車
が2像や3像になっていても明確に分かりません。その点、ビデオカメラの場合は連続して記
録しているので「何がどうなっていったのか」がよく判ります。ビデオカメラをお持ちの方は蜃
気楼撮影に是非チャレンジしてみて下さい。
 次にビデオカメラ購入や使用時のアドバイスを書き連ねて見ます。
  
(1) 新規にビデオカメラを購入する場合、アナログ記録のビデオカメラよりDV(デジタルビデ
   オ)カメラを購入したほうがよい。
   ⇒ 画質が良い、テープが小さい、パソコンとの親和性が良いなどの利点があります。
   
(2) DVカメラを購入する場合、予算があるならば単板よりも3CCDのタイプを選ぶ。
   ⇒ 3CCDの方が解像度、淡い色の記録の点で有利です。最近のDV市場では3社か
     ら3CCDのDVカメラが発売されています。その中でもP社の製品は売価で20万円
     を切る場合があり買得感があります。
   ⇒ 単板モデルならば、プログレッシブスキャン(ノンインターレス)方式で静止画記録で
     きるものを選びましょう。最近はCCDの画素数がメガピクセルを超え、且つプログレ
     ッシブスキャン方式で解像度を高めた動画・静止画(動画よりも静止画に有効)記録
     できるようになりました。
※    静止画記録方式には、従来方式(インターレススキャン)とプログレッシブスキャン(ノ
    ンインターレス)方式があります。同画素数のDVカメラの場合プログレッシブスキャン方
    式は全画素読み出しを行なうので垂直解像度が従来方式より約1.5倍向上します。
 
(3) 光学最高撮影倍率に不満がある場合、デジタルズームよりテレコンバージョンレンズを
   使用する。
   ⇒ デジタルズームで倍率を上げても、解像度は失われるだけです。デジタルズームで
     倍率を上げるほど画像が「モザイク状」または「輪郭が階段状」になります。解像度の
     低下を抑えて倍率を高めたい場合は、ビデオメーカーやフィルターメーカーが発売し
    ている「テレコンバージョンレンズ」を装着するといいでしょう。
    (倍率は2倍程度で1~3万円程度です。)
 
※※  私の場合は、平成8年からDVカメラ(3CCD)にフィールドスコープを装着して撮影し
    います。(35ミリスチルカメラ換算で5000ミリ相当/100倍)
 
(4) 撮影時は、「ホワイトバランス」に注意する。
   ⇒ ビデオカメラには「オートホワイトバランス」というものがあります。しかし、うまく調整
     できずに、全体的に赤、ミドリ、青味がかったりします。カメラに設定があるならば「屋
     外」、「太陽光」などのモードにしましょう。(マニュアル調整できるならば、尚良い)
 
(5) 露出オートでしか撮影できない場合、撮影物がぎこちなく写ったり、ボケて写ったり、ス
   ミアがでたりすることがあるので注意する。
   ⇒ シャッタースピードが速いと、ぎこちない動きになったりスミアがてしまうし、絞りを絞
     り過ぎれば「小絞りボケ」が起こり像がボケてしまう。デジカメ同様「ND(減光)フィル
     ター」を使って調整しましょう!(できれば、シャッター優先で1秒/60ぐらいで絞りま
     たはNDフィルターで調整した方がよい)
  
※※※ 三脚は絶対使用して下さい。手持ち撮影では、高倍率ですからブレますまた、解
    像度が下がるので「デジタルズーム」は使わないで下さい。



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