ヒアラシ考(2)

                      1991.01.16.湖鮎ネットにUpしたもの
                      琵琶湖地域環境教育研究会   松井 一幸

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☆------------ BD21 [12258]AYU0169/1991-01-16 00:00:34/#4426 -------------
琵琶湖と風>忘れないうちに(ヒアラシ考 その2) <KOMATU
 今日はもう寝ようと思いながら、空を見上げるときれいな澄んだ星空です。オリオンはやはり星座の王者ですね。知っているだけの星を名前を確認しながらしばし気象を忘れて宇宙にふけっていました。

 闇夜なので遠くの様子は分かりませんが、北の空はやはり雪雲に覆われているようです。こちらは現在快晴です。10時半に浜へ出かけましたが風は北西に向いていました。弱い風です。湖面を見ると南からの波が弱く押し寄せていました。ちょっとヒアラシに似た感じの波でしたが、風が南からではないのでもう治まっているのでしょう。

 現在の気温は-1.0℃で、冷たく感じます。昼に降った雪も溶け、その水が凍って地面はいてています。昔は今日の夜のような感じの寒さが昼間でもありました。たんぼは霜柱、屋根の軒にはつらら、ちょうずばちには厚い氷をよく見かけました。こんな時に降った雪は確実に積もりました。今日の最高気温は2.8℃、最低気温は-1.0℃ですから、昔は4℃位低かったのでしょう。

 そうそう、忘れないうちにというのは、湖西の南の様子です。今日は和迩へ2回行きました。朝の9時過ぎに行った時は、北小松と同様南からのヒアラシが和迩でも観測できました。比良山系では雪しぐれ、琵琶湖面上は比叡山の方向から北小松辺りまで大きな帯状の雲が連なっています。上空では北西の風が上昇する領域と下降する領域があるのでしょうね。比良山系を降りた雲は下降して断熱的に圧縮され温度が上昇するため一度消えますが、暫くしてまた上昇する時には断熱膨張で温度が下がり露点温度以下に冷やされて雲を形成するのでしょう。地上付近でヒアラシが南から吹いている時は、上層ではこのような空気の流れがヒアラシに直交する形で起こっているようです。

 ヒアラシの時は、
  1) 快晴に近く晴わったっている天気の時と、
  2) 今日のように比良山系には帽子状の雲が、暫く間隔を置いて
    湖面上には南北に帯状の雲が連なる時、

の2種類のパタ-ンが存在するように思います。1)の場合は恐らく上空の風が西風で、丹波山系を越えた風は乾燥しているために比良山系にぶつかり上昇気流が生じても雲を形成できないので滋賀県では快晴の天気になるように思います。

 2)の場合は、上空の風が北西よりに吹くため若狭湾の方面から来た水分を含んだ空気が上昇、下降するために生じる雲であると思います。

 これが正しいとする時、ではなぜ地上では上空の風と直交するヒアラシという南からの風が吹くのか?

 これは、ヒアラシの地形的な発生のメカニズムに対する仮設を立てることになるのですが、現在考えている結論は、「日本海南部の季節風の吹きだしによる風が豊後水道や中国山地から瀬戸内海に入り、四国山地に阻まれて東向きに進み、大阪、京都を北東方向に上昇し、近江盆地に南南西の方向から進入する」というモデルです。ヒアラシが南からやって来るにも拘らず、冷たい乾燥した風だと言うのは、もともと大陸の気団であるのと、中国山地や瀬戸内海、さらには大阪平野を渡って来るときに乾燥しているからではないでしょうか。

 このことはまだ仮設の域を出ませんが、ヒアラシは西日本の地形に関した気象現象であり、この風の行き着く先が琵琶湖であることは大変興味をそそることであります。ヒアラシ現象が起きているとき、大阪や広島の風向に注意していますが、たいてい西の風になっています。近江へ入るときに南南西に頭を振るのは生駒山地や奈良から信楽に連なる山々の地形的遮蔽効果ではないでしょうか。

 ヒアラシの起きている場合に、風向だけではなく、地上天気図にも等圧線が独特の形となって現れます。このことに今年になってから気づきました。ヒアラシは季節風の吹きだしに関連して起こる地形的な気象現象ですから、気圧配置は西高東低の場合に見られ、等圧線は原則的に南北に立っています。しかしこのときなめらかに南北に走るかというと、西日本の瀬戸内海辺りを中心に、等圧線が少し東の方へ弓なり湾曲しているのです。この湾曲があるときに湖西ではヒアラシを観測しています。等圧線が込み合い、南北に走り、東へ出る形で湾曲する場合に、この度合いが強いほど強いヒアラシが生じていると確認できつつあります。この等圧線が東に凸に湾曲する原因を気象学的に解明するのは面白い問題です。

 さて、このような観点に立つと、季節風ヒアラシの最終到着地点は琵琶湖北部ということになります。この辺りはもう一つの「季節風の通り道」である「若狭→今津→関が原→濃尾平野→伊勢湾」ル-トがあり、明神崎から北では両者は合流することになります。この辺の力関係を議論することにより近江の冬の気象を正確に語ることができ、より正確に降雪理論を建設できるのではないかと考えるに至っています。

 以上が現在「ヒアラシ」に対して考えている骨子です。時間が遅くなったため吟味せずにUPしますが、ご意見よろしくお願いします。

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