月のかさ
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雪ダスの周辺>月の「かさ」を調べました
第1部 調べてみました
第2部 留意点
第3部 散乱体が球状の雨粒としたときの散乱光の曲がる角度
第4部 式の吟味と自然現象の説明
第5部 話題源「地学」P132からの説明抜粋
第6部 月かさ現象で得たもの
雪ダスの周辺>今夜も月にかさ! 月かさは語る
第7部 月かさは語る
1990.01.09.& 01.11.湖鮎ネットにUpしたもの
琵琶湖地域環境教育研究会 松井 一幸
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☆------------ BD21 [5843]AYU0169/1990-01-09 22:54:08/#5783 --------------
雪ダスの周辺>月の「かさ」を調べました
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第1部 調べてみました
天気予知ことわざ辞典 大後美保編著 東京堂出版 昭和60年6月1日三版
<月がかさをかぶると雨>
夜,晴れている時に月の周囲に淡い白色または多少色彩を帯びた部分が見られることがあり,これを月がさという.月のかさには直径44度の内かさと,直径92度の外かさとがある.
月がさは,氷の結晶による薄い雲,たとえば絹積雲などに月の光が当たるために生じるのである.従って,かさが見られることは絹層雲のあることを証明することとなり,絹層雲は低気圧の前面や側面によく現れるのである.
すなわち,低気圧に伴う前線が近づいてくると,まず淡い刷毛ではいたような絹雲が現れ,次で絹層雲が見られ,やがてこれよりさらに低く,濃い,中層雲や下層雲が現れて天気が悪くなる.
従って,絹層雲が現れて,月にかさが見られるような時にはやがて天気が悪くなるとみてよい.月かさによっては,翌日雨の降る確率はほぼ60-80%くらいで,一方24時間以内に雨がふる確率はおおよそ20%以下である.
KOMATU注)1. かさ は 日の下に軍を書く漢字で表されています.
2. 文章で4行目の絹積雲は,絹層雲の誤りではないか.
3. 一日後の今日夕方雨が降りました
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第2部 留意点
1. かさは,氷の結晶による,月光の散乱であること.
ここに,昨日の雨粒によるとした計算が現象を説明できなかった原因があると結論できます.
2. 月かさの直径が44度ということは,半径にして22度です.昨日目分量で測った20度にほぼ
あっていました.
虹と同じように外かさがあるのは面白いが,これはまだ意識して見たことがありません.見た
湖鮎さんいますか?
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第3部 散乱体が球状の雨粒としたときの散乱光の曲がる角度
計算をやっているときに,面白い法則が隠れているのに気づきました.
雨粒に入射する角度をi,屈せて屈折する角度をrとすると,1回の屈折で入射光線は(i-r)だけ曲がります.雨粒の中で反射を繰り返す毎に1回につき(180-2r)だけ角度を振ります.そして,出る時には,初めと同じ(i-r)だけ角度を振ります.
従って,雨粒の中で,n回反射して出て来る光は,
(i-r)+n(180-2r)+(i-r)
だけ,初め入射した方向から角度を振ります.
一方,屈折の法則により,SIN(i)/SIN(r)=n
ここに nは,屈折率水の場合,n=1.3334.
A.月と観測者の間に雨粒の層があるとき
散乱光の振れ角 = 180n + 2i - 2(1+n)r
B.虹のように,光源と観測者が,雨粒の層に対して同じ側にいるとき
上の式に180度を補正すればよいから,
散乱光の振れ角 = 180(1+n) + 2i - 2(1+n)r
A,Bの場合とも360度の整数倍不定性は,同じであるとする.
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第4部 式の吟味と自然現象の説明
上の式を吟味してみましょう.
ア.虹の場合‥‥雨粒モデルでよく説明できる
Bの場合に,n=1を代入し,360度を引いて,
散乱光の振れ角 = 2i - 4r
となります.屈折の法則と連動させると,入射光とのなす角が42度で散乱光の極値を得ます.これが,普通の虹(主虹)の半径角になります.
薄く大きな外側にできる虹(副虹)は,n=2の場合で,雨粒の中で2回反射して外へでてくる散乱光によって作られるものです.B式にn=2を代入して,極値となる振れ角を計算すると,この場合の入射光とのなす角が51度の時,散乱光の極値を得ました.この値は,後で知った,とうほう出版の話題源「地学」P132と一致しました.
虹が色づいて見えるのは,振動数による屈折率の違いからくる分散現象です.主虹は上が赤であるのに対して,副虹は逆転し,下が赤になります.
イ.月かさの場合‥‥雨粒モデルでは説明できない
Aの式に,n=0,1,2,‥‥を代入していって極値を求めても,n=3で41度あたりに極致があるだけです.(昨日の計算はn=0のときのみしか考察できていませんでした).n=3は,水滴の内部で3回も反射する光ですから,相当弱まることが予測されます.それに,観測で得た20度を説明しきれません.従って,水滴モデルでは,月かさは説明できないわけです.
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第5部 話題源「地学」P132からの説明抜粋
同僚の地学の先生に聞くと,「話題源の本に,定性的な話がしてありますよ」ということなので,今日家へ帰ってきてさっそく調べてみました.
P132~3にわたってかなり現象が詳しく記述されていました.
<かさ(Halos)>
太陽(月)のまわりにかかる大きな光の輪が,かさである.かさには内かさ(22度)と外かさ46度がある.
かさは,太陽(月)光が氷晶を通過するとき,反射屈折されて起こる現象である.氷晶は正しい六角柱をしているが,この氷柱の面がつくる角度のうち,プリズムと同じ60度の角をなす2つの面で屈折された光は,太陽(月)から22度離れた方向から目に入ることになるのである.同様に,氷柱の端角面90度を通った光は,46度の外かさとなる.
また,屈折角は,光の色によっても違い,赤色光の方が紫色光より小さいので,かさの内側が赤みを帯び,外側は青みがかって見えることになる.
KOMATU注) なぜ氷晶は六角柱か? 水が固体になるのは水素結合によるため.
この結晶構造はダイヤモンド構造を基礎に
している.
物性論,黒沢達美,裳華房P16参照
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第6部 月かさ現象で得たもの
やはり上層部の雲は氷でできているのか!と納得すると同時に,昨日雨粒モデルで角度が説明できなかったことに,徒労ながらも心地よい満足感を得ました.
虹は,雨粒の散乱現象,太陽(月)かさは,氷晶による散乱現象だった!のですね.
今回の調べものでビックリしたのは,「捜せば色々なことがちゃんと載ってあるんだなあ」と言うことでした.自分で考える面白さ.自分で調べ,見つかったときの興奮.自然はやはり奥が深いし,初めに考え,理解したひ人は立派ですね.
時間があれば,22度に挑戦? 証明できればよいのですが.
今宵はここまでとします.長い報告お読みいただき,ありがとうございました.
☆------------ BD21 [5891]AYU0169/1990-01-11 23:20:32/#1848 --------------
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雪ダスの周辺>今夜も月にかさ! 月かさは語る <KOMATU
夕べの強い西風は,2時間程で終わりました.
今夜は,空には満月のお月様.そのお月様に今日も「かさ」がかかっています.
輪の半径は22度.前回とは反対の西の輪の中に<木星>がいます.月かさは,月の光が,絹層雲のなかの氷晶に屈折されてできる輪でした.絹層雲の高度は,数kmのようです.
さて,視角を六角柱のモデルで計算してみました.計算は,ロ-タス123で行いました.グラフもばっちり書いてくれました.(極値がよく分かる!)
<計算結果>
氷晶の側面であるA面に,入射角iで入射した光が,氷晶へ入って
出て来るとき,入射光に対して首を振る角度をSとすると,
A
***** 1.B面へは,全反射となり出られないことが判明.
* * B
* * 2.C面へは,S = i + ASIN(n*SIN(π/3-ASIN(1/n*SIN(i))) - π/3
* * C で出ることが判明.一部全反射あり.
*****
D 3.D面は入射光線と平行になり,S = 0
※ここに,ASIN は SIN の逆関数.
氷晶の屈折率nは,n=1.31である.(水の1.3334より少し小さい).
2の場合に,iを変化させると,Sに極値のあることが判明.i=41度当りで,S=21.8度.これは,月かさの22度と一致.
一方,側面から氷晶の上面,または下面に出て行く光に対しては,面のなす角が90度であるから,2の式のπ/3をπ/2に変えるだけでよい.この場合にもSは極値を持ち入射角i=68度付近で,S=45.7度となることが判明.これは,外かさの46度と一致.
以上のように,簡単な幾何光学を用いて「月かさ」現象を定量的に証明することができました.
今夜の天気予報で,この冬の雲の動きがかなり速いと言っていましたが,4日前に戻った感じで,明日からまた下り坂になりそうです.
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