2002年10月21日(月)~22日(火)南岸低気圧&西高東低型比良オロシ追跡編

2002.10.26. 琵琶湖地域環境教育研究会 松井 一幸

 10月21日(月)の午前中北小松では平均風速6m/s程度の弱い比良オロシが吹きました。また、22日(火)の早朝と夕方にも平均風速8~9m/s程度の比良オロシが吹きました。21日(月)午前中の比良オロシは東海沖を進む南岸低気圧の影響によるもの、22日(火)の比良オロシは大陸から張り出してきた高気圧による西高東低型の気圧配置によるものと考えられます。この比良オロシを、ビワコダス風観測、地上観察、インターネット気象情報を交えて、簡単にレポートしたいと思います。ご意見やアドバイスがあれば、 メールをお願いします。

 2日目の22日(火)にビワコダス風観測北小松風観測所で得られた風データを示します。これはHPでjavaの動画として見ることができます。左上の地上天気図を見ると分かりますが、低気圧の通過で西高東低の冬型気圧配置となり、この北西風に連動して比良オロシが吹いたと考えられます。比良オロシにはいろいろなタイプがあるのですが、所謂西高東低型の比良オロシと考えられます。左は午前8時のビワコダス-アメダス風画像ですが、北小松では突出して強い風が吹いているのが分かります。この時間帯の風枕や風下波動による層積雲の形成について、現地調査を後で詳しくレポートします。


今回の比良オロシは21日(月)午前中に南岸を通過した低気圧に始まるので、ビワコダス風観測で得られた21日(月)22日(火)の2日間のデータを1枚の画像にしたものを示します。21日(月)北小松では6m/s程度の比良オロシが午前中に吹きましたが、これに遅れて湖北では午後に北西の風が吹いています。この時間の遅れは中部山岳地帯の影響によるものと考えています。22日(火)は比良オロシが早朝と夕方にかけて2回吹きました。下に北小松での毎時最大瞬間風速の推移を示しますが、21日(月)の南岸低気圧による比良オロシよりも強いのが分かります。これまでと同じように瞬間風速は平均風速の約2倍になっています。北小松での風が22日(日)の日中には弱くなっているのが特徴的です。毎時最大瞬間風速も5m/s程度に落ちています。この理由はまだ明らかになっていませんが、恐らくオロシにならず北小松上空を風が通りすぎていくためと考えられます。このような時には、風が明神崎から回り込む北東の風になるか、反流で南東の風になることが観測されています。データもこの解釈を支持しています。



デジカメにより観察した風の様子を見てみましょう。
10月22日(火)早朝に北小松の定点観測所である「おたび所」からとらえた比良山系風枕と風下波動による層積雲です。比良山系はしぐれで虹が出ています。層積雲は北小松では湖上を南西方向へ伸び、近江舞子付近で南へ向きを変えていることが分かります。比良オロシでは、風枕が現れるとき、現れないときがあり、風下波動による積雲も現れたり現れなかったりします。またその位置もいつも同じ場所にできるとは限っていません。その様子はこれまでの「風の風景」で断片的に様々なケースをレポートしています。


さて、この風下波動を小松浜から眺めてみましょう。湖上には層積雲が何列にもなって湖東へと続いています。風下波動のうねりだと考えられます。層積雲の一部は上空へと昇り太陽の光を受けて白っぽく輝いています。


次に、この風下波動を明神崎にある白鬚神社前の石段から眺めてみましょう。比良山系に近い最も西の層積雲の連なりは、比良山系や浜辺の地形を反映してか、北東から南西に伸び、近江舞子付近で南方向へ蛇行しています。また、湖上には層積雲が何列にもなって湖東へと続いています。これは風下波動のうねりだと考えられます。層積雲の一部は上空へと上がり太陽の光を受けて白っぽく輝いています。層積雲は上昇気流で形成された定常流による雲と考えられます。ビデオカメラで雲の動きを撮り、早送り再生をするとこの様子がよく分かります。


南東から東の方を観察すると東で層積雲が切れているのが分かります。これは明神崎以北では山地がなくなるために風下波動が形成されないことを示しています。比良山地の風下にできる層積雲は丸みを帯びているのに対し、東の層積雲は風上が薄く尖っている感じが読みとれます。これは今回の発見です。


21日(月)と22日(火)の3時間毎の地上天気図を見てみましょう。上段は21日(月)の3時、9時、15時、21時で、下段は22日(火)の3時、9時、15時、21時のものです。21日(月)午前中の北小松の比良オロシは南岸低気圧によるもの、22日(火)の比良オロシは西高東低型によるものであることが気圧配置から判断できます。


最後に、気象庁アメダスによる22日(火)午前6時の西日本の風の様子を示します。6時過ぎからオロシが吹き始め9時頃まで続きました。7時過ぎに18m/s程度の最大瞬間風速を記録しましたが、風枕や風下波動が形成される直前の風の様子を示しています。日本海沿岸では北北西の風となっています。


まだまだ謎に包まれている比良オロシですが、今回は風下波動でできる層積雲の様子をレポートしました。以上。
以上