2002年8月18日(日)~20日(火)台風13号比良オロシ追跡編

2002.8.22. 琵琶湖地域環境教育研究会 松井 一幸

 台風13号の接近で8月18日(日)から19日(月)にかけて比良山麓では長時間にわたって比較的強いオロシが吹きました。地上観察とビワコダス風観測、インターネット気象情報を交えて、簡単にレポートしたいと思います。ご意見やアドバイスがあれば、 メールをお願いします。

 8月18日(日)から20日(火)にかけてビワコダス風観測で得られた3日間の風データと、北小松での毎時最大瞬間風速の変化を1つにしてみました。


グラフを見ると分かりますが、北小松では18日(日)早朝より比良オロシが吹き始め19日(月)午後9時頃まで続きましたが、20日(火)は弱まっています。長浜では18日は弱く、19、20日に比較的強く吹いています。栗東では19日に比較的強く吹いていますが、3日間とも日中に風は強まっています。このように同じ滋賀県内でも地域によって吹き方が異なっています。JAVA画像を見ればより詳しく理解することができます。

さて、図の最下段に北小松における毎時最大瞬間風速の3日間の推移を添えてみました。比良オロシが強い2日間は15~20m/sの風が吹いています。20日北小松での10分平均風データは1~2m/sの小さい値を示していますが、毎時最大瞬間風速は10m/s程度の風が吹いることが分かります。北小松に住んでいる者としては20日も風が強かった印象を持っていますが、風は吹いていても風向が定まらないことによる平均風速の低下と考えられます。オロシは強い北西~北北西の風が一定するのに対し、20日のような風は強さはあっても向きが変化するためにベクトル平均した風はグラフ上は極端に小さくなっていると考えられます。

ビワコダスの安曇川では3日間同じような5m/s前後の北西の風が吹いています。アメダス-ビワコダス動画比較を見ると分かりますが、彦根や今津のアメダスも同じような傾向を示しています。
湖南の大津方面では18,19日は琵琶湖の形に添うように北北東の風が吹いていますが、20日は北北西の風となっています。これは台風が遠のくにつれ地上等圧線の流れが立ってきたことと符合しています。このことは後でデータを示しながら議論します。

一方、比良山麓の南部にある志賀町南船路観測所では、19日昼過ぎに強い北西の比良オロシを記録しましたが、この時以外は風向が定まらないせいか1~2m/s程度の弱い平均風速しか記録していません。今回の台風13号による風は、県下では18日午前5時頃から北小松で最も早く吹き始めています。

デジカメにより観察した風の様子を見てみましょう。
台風13号の東海沖接近により18日(日)早朝より比良オロシが北小松では吹き始め、翌19日(月)になっても吹き続きました。この時比良山頂にはオロシ特有の風枕が見られました。


琵琶湖には比良山系よりオロシ風が吹き降り、湖面を叩きつけ、沖には白波が立っていました。19日昼前の琵琶湖の様子です。


翌20日(火)は、県北部では北西の風が比較的強く吹いたが、北小松から見る比良山頂には風枕はありませんでした。上空は同じ北西風が吹いていても積雲が通過する時は、比良オロシとはならず明神崎から回り込む北東の風も加わるようである。このことは風向を示す青色のグラフの変化が示しています。南湖では比良山系の背後(西側)を越えてやってきた風が北北西の風を生み出しているようです。


台風13号の軌跡を見てみましょう。台風13号は暴風域(25m/s以上)は小さいものの強風域(15m/s以上)はかなり大きいものでした。北緯30度の線を越えた頃から北小松ではオロシが吹き始めたことになります。18日午前9時頃台風は急に進路を90度右に振り、南岸遠方を関東の方へ進みました。


6時間毎の地上天気図は以下のようになっています。上段は18日、中段は19日、下段は20日です。琵琶湖付近の地上等圧線の走行を見ると、明らかに20日は立っています。比良オロシにはある程度の気圧傾度が必要とされますが、地上等圧線の流れ方の微妙な違いに影響を受けることを明らかにしています。走行だけではなく、曲率も20日は変化しています。能登半島の輪島付近まで広げると違いがよく分かります。18、19日は円形で西に膨らんでいるのに対して、20日は東に膨らんでいます。北小松の比良オロシには、この微妙な変化が影響していると考えられます。


 北小松で比良オロシが強く吹いている19日(月)午前6時の西日本アメダスをみてみましょう。[http://www.imoc.co.jp/]より取得しています。輪島では北東の風が記録されています。日本海沿岸では北東の風が吹いているのに対して、内陸部に進むと北北西や北西の風に向きを変えていることが分かります。


 次に、北小松で比良オロシが弱まった20日(火)午前5時の西日本アメダスをみてみましょう。輪島では北~北北西の風が吹いています。日本海沿岸では概ね北の風が吹いています。内陸部では北西~西北西の風になり、やや西よりに向きを変えています。このように北小松における比良オロシは、他地域の風とも連動しているように思われます。


以上