2001年3月31日(土)比良オロシ追跡編
2001.4.1. 琵琶湖地域環境教育研究会 松井 一幸
3月31日(土)の午後、比良山麓では比較的強いオロシが吹きました。地上観察とビワコダス風観測、インターネット気象情報を交えて、簡単にレポートしたいと思います。ご意見やアドバイスがあれば、 メールをお願いします。
14:37 志賀町和迩中浜
堅田の平和堂へ買物に出かけ帰宅する途中、和邇まで来ると比良山系には雪雲がべっとりとかかり、しぐれていた。国道161号線から和迩中浜の浜辺へ出ると、風が強く、浜へは北から白波が押し寄せていた。東から南にかけて、湖上に細長く連なる雲があった。比良オロシによる風下波動による雲であることが直感的に分かった。この雲は長命寺山方向より南に出ていて、これより北には雲は連なっていなかった。
14:57 志賀町木戸
蓬莱まで戻ると、八屋戸付近で琵琶湖の水面近くに虹がかかるのが見えた。綺麗に写真に納めようと高台に移動することにし、国道161号線志賀バイパスから景色を眺めた。雪がしぐれる比良山系、里の虹、琵琶湖の景色が感動的であった。沖島方面手前には比良オロシの風下波動による雲が細長く南へ延びていた。
大谷川河口沖を眺めると、水煙が高く舞い上がり南南東の方へ移動していた。地元の漁師さんはこの現状を津巻く(つまく)と表現している。激しい比良オロシの突風で、湖面は荒れ白波が立つのがバイパスからもよく見えた。
15:08 志賀町南比良 琵琶湖側 風下波動による雲
国道161号線を北へ移動し、大物を過ぎて南比良にさしかかり、国道近くから琵琶湖の方を眺めると、北は虹、沖島方向から南は風下波動による雲があった。この雲は時間と共に北へ延びていること推測された。比良オロシの風下波動であるから、比良オロシが比良山系の南から北へゆっくり移動していることが見て取れた。この雲の風上から比良オロシは強く吹いてくるのだ。
15:10 志賀町南比良 比良山系 風枕
国道からJR湖西線沿いへ向かい、そこから比良山系を眺めると、強い風が吹き下りてきていた。カメラを持って立っていると、飛ばされそうな勢いで風が吹いてくる。吹いてくる向きは、堂満岳方面からであった。かなり風が強いので、高架上を通る雷鳥は、スピードを極端に落とし徐行運転をしていた。
15:10 強烈な比良オロシを受け徐行する下り雷鳥
15:28 志賀町北小松 琵琶湖側 風下波動による雲
志賀町北小松の小松浜へ移動。風下波動の上昇気流により作られる雲の帯は、雄松崎沖を経て湖上を長命山を対岸とする辺りにまで北上していた。今回の比良オロシは、この雲の位置で吹いている範囲が推測できる。
15:30 志賀町北小松 比良山系 風枕
毎朝の観測定点としている志賀町北小松から比良山系と眺めると、風枕と下流の雲をよくとらえることができた。釈迦岳、ヤケオやリトル比良にも風枕がかかっているのが確認できる。180度のパノラマ写真である。
15:35 志賀町近江舞子 風下波動による雲
志賀町南小松にある小松小学校のすぐ南東地点から南西方向を撮った写真である。中央向こうに比叡山が小さく見えている。右側は打見山の山麓である。風下波動による雲は大変分厚くなり、強い比良オロシが吹いていることが分かる。近くの小松小学校の校庭にはアメダス観測ポイントがある。この地では比良オロシはヤケオや焼山辺りから吹き下りて来る。写真を撮っている間に何度も風に押し倒されそうになった。
さて、ビワコダス風観測の31日の風画像から今回の比良オロシを考察してみよう。
2001.3.31.15:00 ビワコダス風画像
風画像によれば、31日の午後2時から4時の間で全県的に強い風が吹いている。滋賀県南部では正午前から風が強まり、湖南から湖北へと風が強まってきたように見て取れる。北小松よりも南船路の方が強さのピークが若干早い。これは新しい発見である。北小松で比良オロシが強くても、南船路では弱いことが殆どであるが、今回は比良山麓全体に渡って比良オロシが吹いた例となった。
JR湖西線が徐行運転をしているのに出会ったが、北小松における最大瞬間風速は18m/sで、いつもの比良オロシと比べると大した威力を感じさせないが、南比良や南小松で雲を観察していた時の感じでは、ここではかなり吹いていたように思う。
さて、比良オロシと地上天気図の関連について調べてみよう。
3時間毎 地上天気図
31日は未明に低気圧が近畿を通過し、東へ進み房総半島東に達し、西から高気圧が張り出し、西高東低の冬型気圧配置になる。全県的に北西の風が強まったが、午後3時頃地上等圧線が45度に流れ、比良オロシの必要条件が整い、寒気の影響もあってか、比良山麓全体に強い比良オロシが吹いたと考えられる。45度マジックは健在であった。
午後4時の西日本アメダスをみてみよう。
西日本アメダス
今回は輪島では北北西の風である。近畿各地で強風を記録している。北北西の風が比良山系にぶつかり、山を越えて志賀町一帯に比良オロシをもたらしたようだ。
以上