-- 船木崎から見る琵琶湖大橋の形状レポート --

デジカメ画像提供&HP作成  琵琶湖地域環境教育研究会 松井 一幸

1)水面上2.0mの高さからの水平線は僅か5.0km先
下図を見て分かるように、高さh[m]から水平線までの距離x[km]は次のように与えられる。x=3.57×sqrt(h)。ここにsqrtは平方根を表す。h=2.0mの場合、x=5.0kmとなる。これは、人の目線程度の高さから水面を眺めると、水平線が5.0km向こうになることを示している。これより向こうの物は水面下に隠れてしまい見えなくなる部分が出てくることを意味している。
地球は丸いと言っても半径は大きいので、琵琶湖程度の湖では地球の丸さは体験できないだろうと思われがちであるが、目線から見る水平線は驚くほど近く、5km先程度になってしまうのである。

2)船木崎から25km先の琵琶湖大橋はどのように見えるか
琵琶湖大橋の最高部は道路面で26.3mである。ここでは20mの高さ以上の琵琶湖大橋が船木崎から見える高度を計算してみよう。H=20mの場合表よりy=16.0kmとなる。従ってx=25km-16km=9kmとなり、表よりh=7mと算出できる。これは、船木崎で7mの高さから見れば、琵琶湖大橋の20m以上の部分が見えることを意味している。
同様にH=26mとした時、y=18.2kmとなり、x=25km-18km=7kmに対応するh=4mとなる。湖面から4mの高さであれば、琵琶湖大橋の26m以上の高さの部分は見えることになる。これは湖周道路の湖岸沿いより少し高い位置と考えられる。湖周道路の高さが2m程度としても、目線の高さを加えれば4m近い高さになり、湖岸から琵琶湖大橋の上部が見えることはうなづける。
さて、琵琶湖大橋の守山側の低い道路の水面からの高さは5m程度と考えられる。H=5mに取るとy=8kmとなり、x=25km-8km=17kmに対応する高さはh=23mということになる。もしも船木大橋の頂上が20m程度あるならば、目線の高さを考慮するなら、ここからは守山側に続く道路の部分を見ることが可能である。
これは2001年8月22日(水)に行った観察結果をかなりの精度で支持していると思われる。従って上位蜃気楼現象を考えなくても実景で説明できると考えて良さそうである。
3)湖面上の鉛直気温分布で琵琶湖大橋の姿も大きく影響を受ける
上述したように、琵琶湖大橋は水面ぎりぎりの所を通って船木崎に達する。湖面上の鉛直気温分布で光の屈折により琵琶湖大橋は様々な形へと変貌する。2001年8月19日(日)の琵琶湖大橋はレンズ状になっている。これは上冷下暖の空気層の影響による下位蜃気楼である。光は暖かい方へ曲がる性質を持つので、下へ曲がった光がレンズの下の部分となる。上の部分は実景と考えられる。
下位蜃気楼が起きている時は、琵琶湖大橋の下の部分は見えなくなる。この日は湖岸と船木大橋頂上部の中間部分で大橋が見えなくなった。

4)琵琶湖大橋は39km先にある竹生島や姉川河口から見えるか
琵琶湖大橋の26mの部分が見える場合を考えよう。H=26mとするとy=18.2kmとなり、x=39km-18km=21kmとなる。この時の必要な高度は表よりh=35mとなる。水面上35m以上の高所からは見通しが良ければ琵琶湖大橋の観測は可能である。
姉川河口に10階程度のビルやマンションがあれば屋上からの観測で見ることができるであろう。竹生島は水面から高く聳えているので琵琶湖大橋が観測可能に思えるが、船木崎が水平線上で邪魔をしているため、より高く上らなければ見えない。
逆に琵琶湖大橋最高部の26m地点に目線の高さ2mを加えた28mの高さから湖北方面を眺めた写真を見てみよう。

理論的には高いところへ上がると、地球の丸さを考えても竹生島や姉川河口から琵琶湖大橋が見えると予想されるが、最も大きな困難は40kmに及ぶ距離まで澄み切った日が訪れるかということである。上の写真はかなり見通しが良いと思われる日の湖北の写真である。この写真でも竹生島は霞んでいる。だが近い将来誰かによって、姉川や竹生島、びわ町辺りから琵琶湖大橋の写真が提供されることを切に期待します。

5)船木崎からの琵琶湖大橋観測の継続について
2001年8月の観測で3日間の結果を示した。船木崎からの琵琶湖大橋観測は下位蜃気楼、実景パターンを示したが、上位蜃気楼の姿は観測できていない。地道に観測を続けることにより、上位蜃気楼に巡り会える日がくることを祈りながら、いったんペンを起こう。

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